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『千一夜の子守歌』ブレスレット&リング

¥16,500

愛することは信じること


色味と輝きにこだわって選ばれた美しいサテンリボンを贅沢に使った華やかなブレスレット&リングです。

留め金具は最も着脱が簡単なマグネットクラスプ、片手で着脱が出来て脱落しづらいクラスプ、片手で着脱がしやすいマンテル、通常の金具カニカンをご用意しております。オプションにてご選択ください。

パーツは全て、信頼出来るショップで購入した上質なものを使用しています。ひとつひとつ丁寧にお作りしておりますが、ハンドメイド作品ですので工業製品とは異なる部分がございますことをご理解くださいませ。

到着後一週間以内を目安にご連絡いただけましたら、無料で修理させていただきます。多少の破損でしたらご自分で修理していただけるよう修理用接着剤の販売も行っております他、有料で修理をさせていただくサービスも行っておりますのでお困りの際にはご利用くださいませ。

当ショップでは発送まで最大で7営業日いただいておりますが、通常2~5日程度で発送いたします。お急ぎの場合はその旨を備考欄にてお伝えくださればできるだけ早く発送いたしますが、保証は出来かねますのでご了承ください。到着希望の期日がございます場合は、注文前にショップにお問い合わせくださいませ。

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またひとり女が死んでいく。

王妃と使用人たちが一斉に処刑された日、国中に衝撃が走った。そして毎日のように続く女の処刑。王は乱心である、噂はまことしやかに囁かれていた。

次は彼女の番だった。それを知っていても術はなかった。拒もうものなら、家ごと潰され、一族郎党ひとりとこらず路頭に迷うであろう。父も母も使用人たちも、誰もが涙ながらに彼女を見送った。彼女だけが、ただ真っ直ぐに前を見た。これまで夢中になって読み続けてきた、たくさんの物語を胸の中にしっかりと抱えて。

全てに裏切られたその人は力なくそこにいた。その人の揺れる瞳はもはや、赤ん坊となにも変わらなかった。自分の目で見たことすら、もはや何も信じられない。足元には地面があって頭上には空がある、誰もが当たり前のように信じているこの世界の姿すら、彼は信じることが出来ずにいるようだった。

王にとって、この世界は生まれた時から、誰もが自分に跪き、常に自分に微笑みかけ、なにか言えばすべてがそのようになる、そういうものだった。自分は世界に愛されている、それはあまりにも当たり前のことで疑うまでもないことだった。あの日までは。

誰もが自らの意思で命令に従っているとこれまで当たり前に信じてきた。そうでないとしたら、一人一人のあの笑顔の裏にそれぞれの欲望があり、思惑があり、憎しみがあるとしたら。王という権力を前に誰もが敬愛を装い、それらのうちどれだけが本心であるかは誰にも分からない。生まれた瞬間から王として生きてきた彼には、たったひとつの裏切りですら、当たり前に信じてきたもの全てを信じられなくなる理由たり得た。その混乱と絶望が、寝所に送られた全ての女性を処刑するという暴挙に彼を走らせた。

彼はまるで赤ん坊が母親の乳房を探るように、彼女の身体に沈み込んだ。朝が来るその前に、彼女の中になにか信じられるものを探した。だけども柔らかくしなやかな肉体が魅惑的であるほど、彼には憎らしく疑うべきものに思えた。そうして今日もまた、夜が明けようとしていた。

「お話をひとつ、よろしいでしょうか」

彼女は夜明けを前に語り始めた。身の上話でもして同情を誘うつもりかと、そんな風に彼は思った。しかし彼女が語ったのはどこか異国の冒険譚で、拍子抜けした彼はいつしか、彼女の話に聞き入っていた。

「そろそろ朝食の時間ですので、続きはまたいつか」

彼女がそう言うと、続きの気になる彼は苛立ちながらもそれを受け入れ、その夜も彼女を呼び出した。衣服に手をかける彼女を制止し、求めたのは物語の続きだった。

彼女は物語の力を何より信じていた。生まれや、性別や、持って生まれた能力。物語に耽るその間だけは全てを忘れることができた。始まりは単なる、殺されないための時間稼ぎのはずだった。だけども今は、全てに裏切られた王の心の傷を癒すには、千夜を越える長い時間と、あらゆる痛みを忘れさせ、この世界のことを少しずつ好きにさせてくれる、物語の力こそが必要だと感じるようになった。そうして毎晩、彼女は王のために語り続けた。

「そなたは、家族のもとに帰りたいか」

ある時、王は彼女に訊ねた。彼女は少し迷ったような素振りを見せ、その後静かに答えた。

「いつか王が、私の愛を信じてお待ちくださるのであれば、しばしのお暇を頂けたらと思います」

王と彼女は最初の夜以来、ただ物語を話しそれを聞かされるだけの関係となっていた。彼女が王を愛しているなど、そんな話はそれまで一度も聞いたことはなかった。しかし王は、彼女の言葉を少しも疑わず受け止めていることに気付いた。ある夜、彼が突然子供のように泣きじゃくった時も、物語に納得がいかずいつまでも駄々を捏ねた時も、彼女は彼を決して蔑まず、機嫌を取るようなこともしなかった。いつしか彼は、彼女の語る物語ではなく、彼女が物語を語る夜を求めていたと気付いた。

王はある日、ずっと離れていた玉座へと戻った。そこはかつて信じていた全てを意のままに操れる不思議な椅子ではなく、国の頂点としてあらゆる憎しみや陰謀の的になる恐ろしい場所だった。だけども彼は初めて、自分の意志で王となった。自分に向けられた微笑みの裏の本心を、彼は初めて知りたいと思った。それを受け止めた上で、彼は自分の権力をこれからは、他者のために使わなければならないと思った。物語の中の英雄たちが、そうしていたように。

彼は彼女を王妃に迎えた。そして各地に図書館が作られた。誰もが物語に触れられるようにという、彼女の願いを汲んでのことだった。彼女は一年に一度、家族の元に帰った。それから使用人たちにも、一年に一度の休暇を与えるようになったという。

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