『月と星のカノン』香水瓶

月と星は巡る



香水を小分けにして持ち運ぶことができるアトマイザーです。吸い込まれそうなバミューダブルーのスワロフスキーが、揺れる度チラチラと瞬きます。

容量は10mlの大きめサイズ。アルコール消毒液や化粧水の小分け、持ち運びにも便利です。パーツは繊細ですのでお取扱にはご注意ください。


パーツは全て、信頼出来るショップで購入した上質なものを使用しています。ひとつひとつ丁寧にお作りしておりますが、ハンドメイド作品ですので工業製品とは異なる部分がございますことをご理解くださいませ。

到着後一週間以内にご連絡いただけましたら、無料で修理させていただきます。多少の破損でしたらご自分で修理していただけるよう修理用接着剤の販売も行っております他、有料で修理をさせていただくサービスも行っておりますのでお困りの際にはご利用くださいませ。

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月と星が踊る夜空の下で、ひとりステップを踏んでみたり。誰のためでもない自分だけの時間が、こんなにも愛おしいことをいつかの私は知らなかった。

このまま消えてしまっても誰にも気付かれないような、そんな気がしていた。それがあんまり悲しくて、私はここにいるって、叫び続けたあの日々。私自身が私のために、美味しいお茶を淹れてあげるような、そんな簡単なことすらしないで、誰かがそれをしてくれることをずっと待っていた。誰かが私のために何かをしてくれることが、私がこの世界に生きてる意味で、価値だと思っていた。

誰かに気付いて欲しかった。私がここにいるってことを。認めて欲しかった。最初はそれだけのはずだった。それがいつからか膨れ上がって、私の手には負えなくなってしまったの。

私はやっと気付いた。世界の全てが私を賞賛して、全てを私に捧げたとしても、きっと私は満たされない。私が私のために淹れたお茶を飲んで、そのことに満たされることができない限り、私は他人に要りもしないお茶を淹れさせ続けて、それを冷めさせることしか出来ないのだと。

バタフライピーのお茶って、青くて綺麗なんだって。ちょっと高いけれど、興味を惹かれて買ってみた。ところが出来上がったのは、真夜中のような黒いお茶。失敗したのかと思って、何度淹れてみてもやっぱり黒い。幸せで、笑ってしまった。その黒いお茶は全然綺麗じゃなくて、でもちょっと綺麗で、温かかった。

都会の夜空は、あの時のお茶のような色をしている。都会に来てから、あまり空を見上げなくなった。夜も明るいこの街では、ビルの隙間から見える狭い空にも星は見えない。よく目を凝らせばかすかに見える光が夏の大三角と分かって、本当にあの頃と同じ空を見ているんだなと、なんだか不思議な気持ちになる。冬の大三角も知らずに雲間になにかを探したあの日も、夜の展望台に寝そべって流星群を数えたあの日も、都会で見えない星を探して立ち止まる今日も、同じ空なのだ。曇っていても、青空が広がっていても、星の見えない都会の空にも、その向こうには見えないだけで同じように無数の星々が輝いていて、私たちには分からないような速度で変化している。誰にどう見られるとか、評価されるとか、関係なく星はそこにある。

私だってそうだ。誰に見えなくても、誰にも褒められなくても、私は私だ。私が美しいって思ったら美しいのだし、私が素敵だって言ったら素敵なのだ。

あの日の黒いお茶に、私だけの星空を浮かべよう。誰も知らない、私だけの月と星のカノンが、いつまでも私の中に鳴り響いている。