『潮騒』イヤーフック

贈る相手を間違えなかったようだって、ただ思われたいだけ



貝殻を模したモチーフと、暗い海色のスワロフスキーが美しいイヤーフックです。


絵を贈ったことがある。

三万円かけて揃えた道具で、初めて描いた油絵。何日もかけて乾かさないといけない油絵は、私に向いていない。描きあげたのはその一枚きりだった。

その恋人と別れて、贈ったことを少し後悔している。私にとっては大事なその絵も、いまや彼にとってはガラクタ同然だろう、と。


パーツは全て、信頼出来るショップで購入した上質なものを使用しています。ひとつひとつ丁寧にお作りしておりますが、ハンドメイド作品ですので工業製品とは異なる部分がございますことをご理解くださいませ。

商品到着後一週間以内にご連絡をいただいた場合は無料で修理をさせていただきます。それ以外の場合でも、パーツ代と工賃をいただいて修理をさせていただくサービスも行っております。お困りの際にはお気軽にご利用くださいませ。

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 しばらく経って、散らかった部屋から一つの小箱を見つけた。その中には一組のイヤリングと、小さな小分け袋が入っていた。

そのイヤリングは海辺で拾った貝殻を使って、私の誕生日にと彼が作ったものだった。季節は秋、また次の夏が来たら身につけて出かけようと思い、その日は来ないまま別れが訪れた。

一緒に入っていた小分け袋には、余らせた貝殻が入っていた。ちまちまと何かしら作るのが好きな私のことだから、いつかなにかに使うこともあるだろうと、わざわざ入れておいてくれたのだった。




あれから一年、私はアクセサリー作家になった。

まだまだ駆け出しだけれど、たくさんの人が私の作品を買って、喜んでくれる。これでも、実はそこそこ人気があるのだ。


一年前には、こんなことになるとは思いもよらなかった。かつての私は大人の敷いたレールの上をゆくことが、なにより楽で安全で、自分に合っていると思っていた。というより、自信がなかった。自分の足で歩いていくことに。

本当は好きなことを仕事にしてみたい、だけどそれが怖かった。楽しくて大好きなことも、仕事にしてしまえばいつか嫌いになってしまう。だから楽しくて大好きなことをするために好きじゃない仕事をして生きるつもりだと、私はいつか彼にそう話した。

その私が、参考書も買ってコツコツ勉強していた公務員試験は受けずに、こうしてアクセサリー作家をしていることをあの人は知らない。彼の残していったこの小さな貝殻がどんな姿に生まれ変わったか、それだけでも伝えられたらどんなにいいだろうか。


どうせ捨てられるかタンスの肥やしになるくらいなら、あの人に絵なんてあげなければよかったなんて、今ではもう思わない。絵の一枚くらい持たせておいてやってもいいかなって思うくらいには、どこで拾ったかも覚えていない、こんなちっぽけな貝殻が大切みたいだ。

この貝殻も、あのイヤリングも。贈る相手を間違えなかったようだって、ただ思われたいだけ。



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