『氷の女王』リング

生まれというのは選べないものね



キュービックジルコニアとスワロフスキーが降りしきる雪の如く煌めくリングです。

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真っ白な雪に閉ざされた、氷の国の女王は可愛らしい人だった。いつも柔和な笑顔をたたえていて、そこにいるだけで温かい空気を作るような人だった。ただ氷の女王と聞いて思い浮かぶような凍てつくような美しさや、近寄り難い気高さというようなものはあまりない。何ごとも程々にこなし優秀ではあるが、利発さというよりも温和さが目立つ、そういう人であった。

四十年前彼女はこの国の王女として生まれ、十八年前、十三代目女王として戴冠した。柔和な物腰と目下の者へも驕らない態度で周りの人間には好かれたが、気高く威厳を求める気質の国民は彼女を認めようとしなかった。突飛な発想や誰にも真似の出来ないようなセンスこそなくとも、国民のためになる政策を堅実に行い表向き王国は安定を保っていたのだが、国民が最も求めるものはそれではなかった。隙のあるように思われるのか彼女の優しさに漬け込もうとする者も後を絶たず、その度彼女は胸を痛めることになった。本来どこへ行っても好かれ必要とされるだろう彼女にとって、唯一向かないとも言えるのがこの氷の国の女王という仕事であり、彼女の才能と呼べるものが尽く裏目に出る、そんな様子だった。

生まれというのは選べないものね。彼女は遠くの戦火を眺めながらそう言った。この生まれを疎ましく思ったことも、神様を恨んだこともあるけれど。女王専属の御者は、彼女の言葉に耳を傾けている。どう頑張っても変えられないことがあるなら、今あるもので戦うしかないのね。私が氷の女王であることは変えられないけれど、それ以外の全ては変えることができる。誰に理解されなくとも、私だけが知っている私のやり方で、全てを変えてみせるわ。

氷の国は戦争で繁栄した国であった。それ故、此度の女王の判断に今度こそ、国民は怒り心頭であることだろう。事実今まさに国民の手によって、城下には既に戦火が拡がり始めている。国境に侵攻を始めている隣国に対して報復を始める気配のない女王に、国民を捨てて逃げたのだと詰る者、氷の国の面汚しだと怒りを滲ませる者、やはり女王は軟弱であると諦めた様子の者と様々だが、女王を良く思わないことだけはみな同じである。その結果、数千の革命軍が城下へと攻め込んだ。美しかった城下町はあっという間に火の海となってしまった。

女王はひとり身支度をして、誰もいない城を出た。城の裏から細い道に馬車を走らせる。この内乱を察知した女王は既に城の者を全て逃がしたが、女王を隣国に送り届けるため一人の御者が共に残った。当然彼自身も無事では済まないと分かりながら、専属の御者は女王の身を案じて言葉をかけるが、彼女の意志は決して変わることは無い。馬車は国境を超え、何日も走り続けた。

帰りの食料はない。御者は囚われた。しくじれば全て終わりだった。刃を突きつけられ玉座の間に通される。彼女はただ、いつものように微笑んだ。