『QUEEN of Melon』ネックレス

隔世遺伝



瑞々しい赤身メロンのようなチェコビーズを入手しましたので、エレガントなセットアップを仕立てました。

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到着後一週間以内にご連絡いただけましたら、無料で修理させていただきます。多少の破損でしたらご自分で修理していただけるよう修理用接着剤の販売も行っております他、有料で修理をさせていただくサービスも行っておりますのでお困りの際にはご利用くださいませ。

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『美しい網目に涼やかな薄緑色の果肉。というのが王家たる私たちの血筋に受け継がれた上質なメロンの条件でした。しかし可愛い我が子の美しい網目に隠された果肉が赤いことを知った時、そんなことは全くもってどうでもいいことなのだと知りました。

太陽を思わせる赤い果肉に、陽だまりのような微笑。この愛おしい存在に出来うる限りの愛情を注ぎ続けることを、私の生きる意味にしようと決めました。

これまで私が国を良くしたいとどれだけ願っても、この美しい網目と緑の果肉はなんの役にも立ちませんでした。綺麗なドレスを着せられて玉座に座るだけの、単なる人形のようなものだったのです。

彼女の美しい赤肉が女王として価値がないものだとしても、そんなことはなんの意味も持ちません。彼女の価値を誰にも決めることはできない。糖度が高いことや、香りが良いことや見た目が美しいこと、他人にとって価値が高いことと、彼女の人生の重みにはなんの関係もないんです。

この玉座はその象徴です。私をしばりつけるこの椅子から彼女を遠ざけることこそ、私が彼女にしてあげられる唯一のことなのです』

『初めて彼女を見た時は、なんて醜いのだろうと。いや、王族に対して失礼な話かもしれませんが、今までこんな色の王族は一玉もありませんでしたから。

ただ彼女の成長は目覚ましいものがあって、私は少し恥じましたよ。第一印象のハンデがあってなお、人の心を大抵掴んでゆくのですから。

今はなにをやっているのやら私には分かりませんがね。あのまま成長していれば、女王として国のトップに立っていておかしくないと思ったものですが。女王というのは国の代表として、国民が誇りに思えるような存在であるべきなのですよ。それが従来の青肉だけではなく、赤肉であっても魅力的であれば資格があるというふうに風向きが変わっていったのは、彼女の功績であったと私も思うのですがね』

『彼女は王族らしからぬ赤肉にも関わらず、常に他人に囲まれていました。他人を喜ばせるのが巧みで、誰に何を言われようとも上手く躱してみせたので、みんな安心して近付けるような雰囲気もあった。だからこそ、痛々しいほど他人の顔色を伺うのに長けてしまったのだと、なかなか気がつけませんでした。

そういう面では、私と同じだったんです。それが上手いか下手かの違いであって。それを私は、自分とは別の世界の人だと遠ざけてしまっていて。だけど本当は、彼女のようになりたかったし、私だったら彼女のことを分かってあげられたのかな、という気持ちが今もどこかにあります。少なくとも彼女は、私のことも分かろうとしてくれていたと感じたんです。こんなことを言ってももう遅いのですけど。

あれから私は少し変わりました。他人の内心を決めつけて、心に壁を作るようなことはもうやめたんです。彼女は今は風の噂で、どこかで楽しくやっていると聞いています。もし私がもっとはやく気付けていたら、彼女とも友達になれたのでしょうか』

『あいつは痛えやつだよ。元女王だかなんだか知んないけど、自分探しの旅ってやつ？ケッ、所詮恵まれてるやつのお遊びだよ。

メシ食うにも困ったことがねえから、そういう自分探しとかで悩んだりすんだよな。恵まれててよかったな〜？』

『彼女はとっても最悪の女だよ。自分勝手で気分屋でさ。って、そんな感じで奔放に振舞っておいて、意外と常識人っつーかなんというか……。まあ奥底が見えないってカンジだよね。そんな感じの危ない魅力にハマる男も何人かいたけどさ。彼女のイイところって、そういうとこじゃないような気もするけどなあ。

ファム・ファタールとか言って、理想を押し付けられるのは勘弁、って顔してたよ。でも自分にも悪いとこあんだって自覚してんじゃないのかなあ。どうも他人に好かれようと振る舞うのが癖になっちゃってるんだろね。

そのくせ他人からの評価に振り回されないってスタンスが、時々人を寄せつけないっていうように見えることもあるみたいだけど。彼女は人との付き合い方を彼女なりに考えてる途中なんだと思うけどな。そうやって試行錯誤してスタンスがブレブレなのが、奔放だったり自分勝手見えたりするんだろな。実際は真面目すぎて、迷走しちゃってるだけだね、きっと』

『さあ？私はあまり知らないねえ。ただ、陽だまりのように笑う子だよ』

『私がどんな人であるか、私には分かりません。他人にも分からないでしょう。でも私はようやく私を生きているという感じがします。自分が無力で、浅慮で、つまらない人間であることを認めて自由になってからは、全部が価値のあることのように思えるのです』